『女性学・男性学』

タイトル 女性学男性学
著者名 伊藤公雄樹村みのり・國信潤子
出版社 有斐閣アルマ
出版年 2002,1

読了日 2017,6,8

 

要約
現代社会ではジェンダーによって意識や社会の仕組みが構造化されている。男女ともにジェンダー・フリーの社会の実現により自分らしい生き方をすべきだ。

商品価値の高い女性を求めて男性は争うが、女性がより高く売ろうとする中で「売り手」側に主導権が渡ることになる(=女性が主導権)。


産業革命後に女性の地位は下がった。世界の2/3は女性の労働なのに支払われたのは5%。無償労働を有償化したり社会化したりしているが限界がある。非正規雇用(女性が多い)と正規雇用の格差が大きいことも課題である。生産労働中心からサービス情報中心の産業に移行し、労働もジェンダーレス化している。男性もまた過労死、リストラなどの問題に直面している。今後はアウトソーシングが拡大し能力主義によりジェンダーレスになっていくだろう。


家族という視点で見ても、非嫡出子差別、再婚禁止期間、夫婦別姓などに女性差別がみてとれる。離婚の場合に女性も男性も子供もプラスになるような仕組みを作るべきだ。
育児休暇をスウェーデンのように日本でも男性が実際にとれるようにするべきだ。父親が子供と接する時間の減少、核家族化、地域社会との結びつきの減少、少子化による一人っ子増加により子どもが多様な人とコミュニケーションを取る機会が減り、社会のルールを身につける機会が減っている。少子高齢化に伴い、高齢者が働ける社会の実現、女性労働力の増加も求められている。


グローバリゼーションの深化に伴い人種、性、宗教などを超えた人権の確保と環境保全という2つの価値理念が地球規模で共有された。一方でボーダーレスに伴い強い反発(男らしさ、女らしさを重んじる風潮)も起こっている。


従来の産業化を意味する発展途上国の「開発」は必ずしもプラスにはならなかった。1980年代に地域住民の生活基盤確保、人権擁護を重視する「もう1つの開発」と言う視点が生まれ、女性差別をなくす努力がなされている。ジェンダー・フリー社会(ジェンダーの縛りから解放された社会)、一人一人がより「自分らしく」生きる社会へ転換することが求められている。

 

感想
ディスカッションのために読んだ。古い本だから今現在の状況を調べるきっかけにしたい。何よりも意識を変えることが先手だと思った。制度が整ってなくても個人で問題意識を感じることができていれば制度も改善されていくと思う。逆に一部の人が細かいところまで女性差別と捉えて反動が起こってしまうのはもったいない。